親ごころ


クライリ(+ミスミノ)
※捏造過多ですので注意!


「最近あの子ったら、とっても楽しそうなのよ。今日だって2人でお出掛けするみたいなの、今朝嬉しそうな顔で話してくれたわ」
 なんの脈絡もなく切り出した話にクラウスは首を傾げる。

 午後のおやつの時間とされる頃、イリスとクラウスの2人はテーブルを挟んで各々好きな飲み物を口にして居た矢先の言葉だった。
 物書きの彼女にしては珍しい唐突さに、目を瞬かせ逡巡する。
 彼女が言う「あの子」は彼女の弟を指していることは分かっているが、それを言い出した意図がわからない。

「ほら、新しい女の牧場主さんのミノリさん来たでしょ?その子が来てから最近、あの子の口からよく彼女の話を聞くようになったのよね」
 その言葉に要約合点がいき、「ああ」とクラウスは頷く。

 つまり彼女が言いたいのは、おそらくこうだろう。
 彼女の弟であるミステルが新しくこの地にやってきた牧場主のミノリに気があるかもしれないという事だ。
 元気で明るくしっかりしている子だと思ったのは初めてクラウスの元へ挨拶に顔を出した時から数週間経った今でも変わらない印象だ。彼でなくても一目惚れする男も多いだろう。

「……、弟が離れて行くのが寂しいのか?」
 何と無くそう思って口にすると、虚を突かれたかのようなポカンとした顔をされてしまった。
 本来ならいつもこの時間は3人でお茶をするのだが、今日はイリスとクラウスの2人だけだ。そう思うのも普通だろうと踏んだのだが。
 彼女の驚いた表情に外れたかと判断しかねていると、ふふっといつもの猫が笑ったような柔和な笑みになった。
「それは考えてなかったわ。でも、ふふ、そうね。確かに、寂しいのかも。いつまでもあの子は、小さいままじゃないものね」
 哀愁を漂わせるようにほんの少し眉根を寄せ笑った彼女。

 イリスがそう感じるのは仕方もないことだろう。ただ単に姉弟という関係であることもあるだろうが、何せ年が離れている。
 親としての心境もあるに違いない。そして同じくクラウスも、その気持ちは他人でありながらも感じていた。
 自分を大人として慕ってくれ、クラウス自身も弟のように想っていたあの幼かった彼が、いきなり急くように成長していくような複雑な心地。
 元より口ぶりや立ち振る舞いは大人と並ぶほどの落ち着きっぷりだったが、ふとした表情や仕草が幼くてイリスやクラウスはそんな彼の子供らしい所に親心でも刺激されたのか、ひたすら可愛く見えて仕方なかった。

「なに、まだ恋をしたばかりだ。やっと、年相応らしくなったと言えばなったじゃないか。無理して俺たちに合わせる必要もない、年の近い友達…いや好きな人が出来て良かった」
 少しだけ感じていた。彼は年上2人に馴染めるように無理をしているのでは、と。
 でもそんな事はなかったのだと、彼は彼なりにしっかり自分の道を歩んでいたというのがわかっただけ良かった、本当に良かった。
「そうよね、愛想はいいこだから、お友達はそれとなく居たけれど恋をしてる様子は今までなかったもの。姉として応援してあげなくちゃ」
 ああ見えて結構積極的なのよ、あの子。
 一体誰に似たのかしらね、と心底嬉しそうに微笑む彼女に、実は寂しがっていたのではなく、からかいたかってやろうと話のネタにしたかったのかと分かる。

 何だかせっかく慰めの言葉を並べたのが虚しく思えてくる。いつもの事ではあるが。
「あら、そんなに呆れた顔しないで。寂しいのは事実だもの。これからもっと3人で行動することが減ってしまうのよ、それに結婚しちゃったらもうそんな機会なくなっちゃうかもしれないわ」
「おいおい、まだ付き合ってもないんだぞ。幾ら何でも、結婚は飛びすぎじゃないか」
「わからないわよ?いつまで経っても結婚しない姉と兄もどきを見てたら自分は早くって思うかもしれないわ」

 結婚はまだしないのかと聞かれたらしい。
 流石にそれはクラウスも耳が痛い話なので苦笑を返す。

「それは、生意気に育ったようで何よりだ」
「うふふ、でしょう?本当に生意気よねぇ」
 こんな事を聞かれたら子供扱いをされたとばかりそっぽを向いて拗ねる顔をされそうだと思いながら2人して笑いあう。

 そんな昼下がりの午後。


-Fin-

*おまけ

「だけど、兄もどきっていうのは心外だな。俺はミステルを本当の弟のように思っているのに」
「あなたの片想いかもしれないわ。最近フリッツさんがミステルの面倒見てくださってるみたいだもの」
「……」
「あら、寂しい?悲しい?」
「…楽しんでるだろ」
「うふふ、だって楽しいんですもの」

ゲームをほとんど進めていないので捏造過多という。ミスミノは多分デート中です多分(二回)