告げられなかった想い


チハヤ*アカリ   

※悲恋


 真っ直ぐ見つめる、あの目が好きで。
 ずっと、出来ればこの先一生、あの瞳に映っていたい。

 なんて、哀しいまでの幻想を描いては、リアリストなもう一人の僕がそれを打ち消した。


「好きだよ」

 閉じた瞼の裏に焼き付いた彼女を浮かべ、触れれば壊れてしまいそうな淡い言葉を僕は紡ぐ。
 それは、シンとした部屋に重く低く響いて、僕の頭の中を反芻し染み込んだ。

 あと何回、好きと言えば彼女に伝わる?
 あと何回、彼女を思えば彼女に僕が映る?
 あと何回、僕は涙を流せば、彼女への想いは消える?

『私、あの人が好きなの』

 身を切り裂かれたような、そんな衝撃が身体中に走る。
 あの瞬間を、今でも身体は嫌と言うほど鮮明に覚えていて。

 忘れたい。
 忘れられない。

 矛盾した想いがせめぎ合っては、僕の心に傷を付けていく。


 ポタリ  ポタリ
 涙だけが、静かに独りきりの部屋に落ちる。


- Fin -


チハアカ悲恋でした。アカリの相手は特に決めてないので想像にお任せします。
※この話に、「はちみつ林檎」のじゃこ様が素敵イラストを描いてくださいました!⇒こちら